「帝王切開で生まれると、赤ちゃんの腸内細菌叢が違うらしい。」
そんなネットニュースを見て、
「本当にそうなの?」
「もし違うなら、赤ちゃんの健康に影響はあるの?」
と気になり、元になった論文を読んでみました。
タイトル
Stunted microbiota and opportunistic pathogen colonization in caesarean-section birth
掲載誌
Nature(2019)
研究デザイン
前向き観察研究(コホート研究)
対象
英国で出生した正期産児596人(経腟分娩314人、帝王切開282人)とその母親
解析
新生児期〜乳児期に採取した1,679便検体をメタゲノム解析
テーマ
出生方法(帝王切開・経腟分娩)と赤ちゃんの腸内細菌叢との関連
この研究でわかったこと
この研究では、
出生方法(帝王切開か経腟分娩か)は、新生児期から乳児期にかけての腸内細菌叢の構成に関連する重要な要因であること
が示されました。
具体的には、
- 帝王切開で出生した児では、母親由来の一部の細菌(特にBacteroides属など)の伝播が少ないこと
- 病院環境に由来すると考えられる日和見病原体(Enterococcus属、Enterobacter属、Klebsiella属など)の定着が多いこと
が確認されました。
一方で、これらの腸内細菌叢の違いが、実際の健康にどのような影響を与えるのかについては、この研究では明らかになっていません。
研究について
研究デザイン
英国で出生した母子を対象に、出生後から乳児期まで便サンプルを採取し、腸内細菌叢を解析した前向き観察研究。
対象
- 英国で出生した正期産児596人 の便サンプル(新生児期)
- 経腟分娩:314人
- 帝王切開:282人
- そのうち302人の乳児から乳児期後半の便サンプル
- そのうち178人の乳児の母175人 の便サンプル
- 新生児期から乳児期まで計1,679便検体を解析
研究結果
① 帝王切開児では母親由来菌の伝播が少なかった
② 帝王切開児では病院環境由来と考えられる菌が多かった
③ 分娩方法は新生児期の腸内細菌叢に大きく関連していた
④ 母体への抗菌薬投与や授乳も関連していた
出生方法だけでなく、母体への抗菌薬投与や授乳状況も腸内細菌叢と関連していました。
- 経腟分娩でも母親に予防的抗菌薬が投与された場合
- 母乳栄養でなかった場合
にも、一部で帝王切開児と似た腸内細菌叢の変化が認められました。
研究の限界
この研究は、腸内細菌叢の違いを示した研究であり、その違いが健康へ影響するかは評価していません。
まとめ
この研究から言えること
- 出生方法は新生児期の腸内細菌叢の構成に関連することが示されました。
- 帝王切開児では母親由来細菌の伝播が少なく、病院環境由来と考えられる菌の定着が多いことが観察されました。
まだわからないこと
- 腸内細菌叢の違いが将来の健康へどの程度影響するか。
- これらの違いが長期的に持続するか。
- 腸内細菌叢の変化を介入によって改善させると健康状態などに影響はあるか。
さいごに
分娩方法は自分では選べないし、どのような形であれ出産は大変で、身体的にも精神的にダメージが大きいです。
このようなネットニュースが流れてくると、うちの赤ちゃんは大丈夫だろうか、と心配になる人もいるかもしれません。
この研究では、出生方法と腸内細菌叢との関連が示されましたが、健康への影響については評価されていません。
今回の論文を読んでいて私が気になったのは、「では、この違いは健康に影響するのか?」という点です。
他の論文で、「帝王切開で生まれた赤ちゃんの腸内細菌叢を、経腟分娩に近づけることはできるのか?」という研究も示されています。
次回は、その続きとして紹介したいと思います。
- 帝王切開と経腟分娩では、出生直後の赤ちゃんの腸内細菌叢に違いがみられた。
- 帝王切開児では母親由来細菌の伝播が少なく、病院環境由来と考えられる菌が多かった。
- ただし、この違いが将来の健康にどのような影響を及ぼすかは、この研究では明らかにされていない。
この記事は、査読付き学術論文をもとに作成しています。
論文の内容をできるだけ正確に、わかりやすく紹介することを目的としており、医学的な診断や治療を目的としたものではありません。
また、紹介している内容は執筆時点の研究結果に基づくものであり、今後の研究によって知見が更新される可能性があります。
※なお、この研究は出生方法と腸内細菌叢との関連を示したものであり、帝王切開や経腟分娩の優劣を示すものではありません。


