社会人になってからの大学院進学は
「仕事を続けながら大学院に通えるのだろうか」
「結婚や出産があっても続けられるか」
と悩んでいる人はいるのではないでしょうか。
私は、フルタイム勤務で修士課程へ進学し、博士課程はパート勤務で働きながら進学しました。
その間には結婚・出産・育児・転職も経験し、思うように研究が進まない時期や、何度も悩んだ時期がありました。
この記事では、
- 社会人大学院へ進学した理由
- 仕事・育児との両立で工夫したこと
- 大変だったことと乗り越え方
- 進学前に確認しておきたいポイント
を、私自身の経験をもとに紹介します。

なぜ社会人大学院に進学したのか
修士課程(看護学)に進学した理由は、仕事をしていく中で、現場での経験だけでなく、学術的な視点も持つことで、より良い仕事ができるようになりたいと思ったからです。
実際に学んでみると、仕事につながる内容も多く、新しい知識や考え方に触れられたことは大きな財産になりました。
一方で、「本当に自分がやりたい研究は少し違う分野かもしれない」と感じ、専攻変更を考えた時期もありました。
しかし、勤務形態などの都合から当時は変更が難しく、そのまま修士課程を修了しました。
それでもその分野への興味を諦めきれず、教授に相談したところ、博士課程への進学を勧めていただきました。
そのとき初めて、修士課程とは異なる専攻でも博士課程へ進学できる場合があることを知りました。
結果的に、自分が本当に取り組みたかった研究に挑戦できる環境を得ることができました。
修士課程は仕事とどう両立したか
担当教授に相談し、長期履修制度を利用しました。
通常2年間で修了するカリキュラムを3〜4年かけて履修できる制度で、仕事を続けながら学ぶ上で大きな助けとなりました。
社会人の方は、無理に2年で修了を目指さず、長期履修制度が利用できるか確認してみることをおすすめします。
また、職場の上司にも事情を相談し、できる範囲で勤務を調整していただきました。
具体的には、週1回の休日や夜勤の希望を出し、日中の授業に参加できる時間を確保しました。
社会人大学院では、大学だけでなく職場の理解も継続の大きな支えになると感じました。
博士課程での生活の工夫
博士課程では、社会人学生が多い専攻だったため、オンライン授業や夕方以降の講義が多く、仕事との両立がしやすい環境でした。
産後は夫と子どもの送迎などの予定を共有し、協力しながら研究時間を確保しました。
ただ、このスケジュールが整うまでに何度も夫と喧嘩をし、話し合いもうまくいかず大変でした。
スムーズにはいきませんでしたが、自分たちに合う方法を試して、夫や周りの協力を得ることが継続するために必要でした。
出産・育児と大学院の生活
博士課程では在籍中に出産、育児を経験しました。
産後の研究復帰
最初は無理をせず、短時間でできる作業などから再開しました。
今振り返ると、体力的には大変でしたが、好きな研究に取り組めたことは精神的な支えにもなっていたと感じています。
私自身が研究を早く再開したいという気持ちで復帰しましたが、産後の回復や家庭の状況には個人差があります。
休める時間を確保し、無理のないペースで復帰時期を考えることが何より大切だと思います。
保育園
復帰に向けて、できるだけ早く入園できる保育園を探しました。
入園できるまでは、一時預かり保育を利用しながら研究を進めていました。
搾乳
職場で搾乳できる場所を聞きました。
冷凍庫を使わせてもらって搾乳したものを保存し、保育園にもっていっていました。
学会の参加の仕方
学会では、会場の託児サービスを利用しました。
託児がない場合には、会場近くの一時保育施設を探して利用したこともあります。
学会参加が決まったら、託児の有無は早めに確認すると安心です。
こどもの体調不良
子どもが体調を崩したときは、その日の予定を調整して迎えに行っていました。
どうしても外せない実験や仕事がある日は、夫が帰宅したあとに研究室へ戻ることもありました。
病児保育は実際には利用しませんでしたが、いつでも利用できるよう事前に説明を聞き、登録書類を準備していました。
「使わなくても、登録だけは済ませておく」という備えは、とても安心につながりました。
大変だったこと
夜勤明けの授業は想像以上につらかった
夜勤明けにそのまま授業へ参加することもありました。
眠気で授業に集中できず、白目をむいて笑われたこともあります。
さらに、疲労から授業の帰り道に事故を起こしてしまったこともあり、今思えばとても危険でした。
勤務調整が難しい場合は公共交通機関も選択肢になると思います。
実験は思うように進まない
実験は予定どおりに進むとは限らず、子どものお迎えや仕事の予定との両立に悩むことも少なくありませんでした。
次の予定が迫る中で焦ってしまい、かえって失敗を重ねることもありました。
保育園のお迎えとの時間勝負
実験が予定より長引き、お迎えの時間に間に合わなくなりそうなこともありました。
実験スケジュールを組み直したりして対応しました。
家族にイライラして自己嫌悪
「自分ばかり頑張っている」と感じてしまうこともありました。
家族にイライラしてしまい、その後で自己嫌悪になることも少なくありませんでした。
助けられた制度やサービス
仕事・研究・育児を両立するために、さまざまな制度やサービスを利用しました。
すべてを常に利用していたわけではありませんが、「頼れる選択肢を持っておくこと」は精神的な安心にもつながりました。
- 保育園
- 一時預かり保育
- シルバー人材センター
- 家事代行サービス
- ベビーシッター
- 家族のサポート
- 長期履修制度
それぞれ利用できる条件や費用は地域によって異なるため、必要になってから探すのではなく、事前に情報を集めておくことをおすすめします。
大学院に進学して良かったこと
新しい知見を得られた
現場で感じていた疑問を、理論などを用いて考える機会もありました。
仕事での判断や物事の見方にも変化があったと感じています。
年齢の違う友人ができた
学生だけでなく、さまざまな職種や年代の社会人学生と出会うことができました。
普段の仕事では得られない考え方に触れられたことは、大きな刺激になりました。
研究が楽しくなった
自分で疑問を見つけ、調べ、結果を考察する過程は想像以上に面白く、学び続けたいという気持ちがさらに強くなりました。
国外の方との交流で視野が広がった
海外の研究者や学生と交流したり、海外へ行く機会を得たりしたことで、日本だけでは気付かなかった考え方や研究環境に触れることができました。
キャリアの選択肢が広がった
大学院での経験を通して、自分が本当に取り組みたいことが明確になり、将来の進路について考える幅も広がりました。
今ならこうすると思うこと
無理をしない、休む計画を最初から立てる
夜勤明けに授業へ参加した結果、疲労で集中できず、帰宅途中には事故も経験しました。
今振り返ると、勤務を調整して休みの日に授業へ参加する、仮眠を取る、運転を避けて公共交通機関やタクシーを利用するなど、安全を最優先に考えるべきだったと思います。
また、精神的に余裕がなくなることもあったため、結婚や出産、転職など生活が大きく変化する時期は、予定を詰め込みすぎず、あらかじめ「休む時間」を確保しておくことも大切だと感じました。
家族と早めに話し合う
もっと早い段階で家族とコミュニケーションを取り、家事や育児の分担、研究時間の確保などについて一緒に考えておけばよかったと思います。
生活が忙しくなってから話し合うよりも、進学前から役割やお互いの希望を共有しておくことで、気持ちにも余裕が生まれると感じました。
完璧を目指さない、周りと比較しない、自分のペースをつかむ
周囲の研究成果や学会発表を見て、「もっと頑張らなければ」と焦ることが何度もありました。
その結果、無理を重ねて体調を崩してしまったこともあります。
今は、周りと比較するのではなく、「昨日の自分より少し前に進めたか」という視点で考えるようになりました。
自分ができていることにも目を向け、自分のペースで続けることが、長く研究を続けるためには何より大切だと感じています。
社会人大学院を目指すときのチェックポイント
私自身の経験から、進学前に次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 研究内容(やりたいテーマは何か)
- 専攻、研究室(やりたいことと合っているか)
- 専攻、指導教員(社会人学生受け入れ可能か)
- 長期履修制度(利用できるか)
- 授業(夜間・オンライン対応か、単位数)
- 学費(総額はいくらか)
- 奨学金(利用できる制度はあるか)
- 職場(勤務調整できるか)
- 家族(理解、協力体制はあるか)
さいごに
社会人になってから学ぶことは、仕事や家庭との両立に悩むこともあります。
一方で、学ぶことは年齢に関係なく挑戦できる選択肢の一つでもあります。
今は難しいと感じる方も、情報収集をしたり、家族や職場と相談したりしながら、自分に合ったタイミングや学び方を見つけていけると思います。
「もっと知りたい」という気持ちから始めた学びは、とても面白く、私にとって大きな財産になりました。
大学院の制度や条件は、大学・専攻・研究室によって異なります。興味のある分野があれば、まずは研究室や教員へ相談してみることをおすすめします。
その小さな一歩が、思いがけない新しい道につながるかもしれません。


